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マタニティー歯科 母と子 ダブルで予防
ある産婦人科医院の待合室。妊婦さん同士がおしゃべりしています。
 「実は私、むし歯があるがよ。しかも最近、歯磨きしたら血が出るがってね」
 「それって赤ちゃんにうつらんが?」
 「むし歯とかって赤ちゃんにうつるが!?」

むし歯はうつる?

 「マタニティー歯科」という言葉を耳にしたことがありませんか? お母さんには歯周病予防、そして赤ちゃんには母子感染の防止を含めたむし歯予防―と、ダブルで予防しようというのがマタニティー歯科です。
 妊娠期のお口のトラブルについては、前シリーズの「女性のための健口講座」第3話でも紹介しました。女性ホルモンの分泌が増える妊娠期には、歯周病菌が約5倍に増えるために歯ぐきが腫れやすくなり、出血などの歯周病症状が現れます。その影響はお口の中だけにとどまらず、歯周病で発生した炎症物質が血液を介して子宮を収縮させ、早産や低体重児出産の危険性が高くなるといわれます。
 それに加えて妊娠期には、ホルモンバランスの変化で抵抗力が低下する▽つわりで口の中が汚れやすくなり、清掃も不十分になる▽食べ物の好みが変わる―など、さまざまな理由でお口の中の状態が悪くなりがち。歯周病にもむし歯にもなりやすい時期といえるでしょう。
 次に、赤ちゃんのむし歯予防で知っておいてほしいのは、むし歯が実は感染症だということ。むし歯菌はそもそも、生まれたばかりの赤ちゃんのお口の中には存在しません。ところがお母さんや家族にむし歯菌があると、口移しで食べ物をあげたり、同じ食器を使ったりすることで簡単に赤ちゃんにうつってしまうのです。

守ろう赤ちゃん

 赤ちゃんを守るためにはまず、お母さんが健口であることが第一です。そこでお勧めしたいのは、歯周病予防としては歯科医院での歯石取りと清掃、そして家庭での自己ケアを。むし歯予防では、安定期であればむし歯を治療し、普段は歯磨きを欠かさずに。歯磨きがどうしてもできないときはキシリトールガムがお勧めです。キシリトールガムには、かむことでむし歯から歯を守ったり、お口の中をきれいにしてくれる唾液(だえき)の分泌を促す働きがあるので、洗口液とともに有効な手段といえるでしょう。
 出産後の赤ちゃんの歯を磨くことだけが、むし歯予防ではありません。お母さんをはじめ、家族全員に“健口”であることの大切さを考えてもらうこともまた、マタニティー歯科の役目なのです。