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妊婦の口腔トラブル 原因は女性ホルモン
温かな日差しが注ぎ込む歯科医院の待合室。大きくなったおなかをいとおしそうになでていた妊婦さんに、隣に座った年配の女性が話しかけました。

 「何カ月ですか?」
 「6カ月を過ぎたところです」
 「楽しみやねえ。でも、赤ちゃんができるとカルシウムをたくさん使われて、お母さんはむし歯になってしまうがよね。私も子どもを産んでから歯がガタガタで、もう大変やったがやき」
 「そうなんですか!?」

 結婚前から定期的な歯科健診を欠かさず来院していた妊婦さんもさすがにショックを受け、治療室に入るなり先生に質問しました。

 「出産すると歯がガタガタになるって本当ですか?」

 女性の体は女性ホルモンの影響を受けています。女性ホルモンの分泌が急速に増えるのは思春期。その後、20代にかけて成熟期を迎え、40代半ばまで続きます。それ以降は個人差があるものの、女性ホルモンの分泌量によって更年期から老年期へと変化をたどり、その変化は「女性の体の変化と健康の節目」でもあります。
 女性ホルモンには、妊娠や全身に影響を与えるホルモンと、歯ぐきの血管に働きかけて炎症を起こしやすくするホルモンの2種類があります。思春期や妊娠期に、少しのプラーク(歯垢=しこう)が残っているだけでも歯ぐきの血管が炎症を起こし、ひどく腫れやすくなったりするのは、女性ホルモンの分泌が増えるからなのです。
 特に妊婦さんはホルモン分泌がかなり増えるので、お肌はスベスベでとてもきれいなのですが、一方で口の健康に気をつけなければならない時期でもあります。女性ホルモンの濃度が高くなるとともに、女性ホルモンを栄養とする歯周病菌が増加することもあるので要注意です。
 妊娠期はただでさえ、つわりの影響などで歯ブラシを口の中に入れるのがおっくうになり、プラークコントロールがおろそかになりがち。歯周病にもむし歯にもなりやすい時期といえるでしょう。
 中には、妊娠中に歯科を受診することに不安を感じ、少しくらいの痛みなら我慢してしまうケースも。以上のようなことから、「出産したら歯が弱くなる」と感じる女性がいたのでしょうね。

 妊婦さんの口腔(こうくう)トラブルは女性ホルモンの仕業。決して赤ちゃんのせいではないということを覚えておいてください。

 「それを聞いて安心しました。赤ちゃんが産まれて歯が生えてきたら、親子で健診に来ますね」

 実は、赤ちゃんのむし歯予防はおなかにいる時期から既に始まっているのですが、その話はまたの機会に。