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第4回コラム 「かみかみ」で健康長寿

寺岡加代
東京医科歯科大学歯学部 口腔健康教育学分野教授

平成21年11月13日(金)掲載


 寝たきりや認知症になる原因の多くは、家の外に出ない「閉じこもり」にあるのをご存知でしょうか? 外出せずに、閉じこもりの生活を続けていると、廃用症候群(生活不活発病)へ、さらには寝たきりや認知症に至る事実がよく知られています。

 閉じこもる理由としてまず思い浮かぶのは、転倒骨折や脳卒中の後遺症などが原因で、歩くのが困難になるといった身体上の支障ではないでしょうか? 実はそのほかに、もう一つ見過ごされやすい原因があります。「食事や会話の不都合」です。

 つまり、お口の機能の低下が原因で、食べることや人と話すことに支障が出ると、人との付き合いや社会での活動がおっくうになります。すると、家に閉じこもりがちになり、それが長引くと足腰も衰え、さらに出にくくなる―という悪循環に陥ることになります。

 また、外出が減ると身体だけでなく、精神的にも落ち込むことになり、心身ともに衰えが加速します。そこで高齢者にいつまでも健やかに自立した生活を送っていただくために、2006年から国の施策として、寝たきりや認知症を予防するための「介護予防事業」が始まりました。

 「閉じこもりの予防」「うつ予防」「認知症の予防」事業などがありますが、事業の3本柱は「運動器の機能向上」「栄養改善」「口腔(こうくう)機能向上」です。高知県の介護予防事業が実は、全国でも有名なことをご存知でしょうか? 65歳以上の皆さんの中には、「かみかみ百歳体操」や「いきいき百歳体操」に参加された経験のある方もおられると思います。

 そもそもお口は、食べ物を噛(か)む▽のみ込む▽唾液(だえき)を出す▽話す―など、人間が生きていくために欠かせない機能を担っています。家族や友人と食事を楽しんだり、おしゃべりをすることは、年齢とともにかけがえのないものになっていくのではないでしょうか?

 お口の機能をフル活動させるためには、歯だけではなく、舌や口唇、口の周囲の筋肉、さらには唾液などが共同して働くことが必要です。これらお口の働きの老化を遅らせたり、回復させるために「かみかみ百歳体操」は非常に効果があります。お口の大切さを理解していただき、「よく食べ、よくしゃべる」お年寄りになりましょう。